刺青・アートメイク・外傷性刺青除去のレーザー治療
刺青は世界各地に古くから伝わる身体装飾の方法で、深く文化として根付いていました。しかし一時の流行り、勢いで刺青を入れてしまったが、後悔している方や、刺青を入れたことは後悔していないが出来上がった絵柄に不満があって、修正を希望する方等いらっしゃるのではないでしょうか。
アートメイクも化粧を簡単に済ませるために有効でありますが、それこそメークの流行の変化に取り残されてしまった場合は取るより他ありません。レーザー治療では瞼の際などのミリ単位の細かいものから、背部全面等広範囲のものまで対応が可能です。
レーザー治療の原理と実際
現在刺青治療の主流はピコレーザーになっています。
ピコレーザーとはレーザー光の照射時間がピコ秒(1ピコ秒:1兆分の1秒)単位のものを指します。
当院で使用するレーザーは750ピコ秒のレーザー照射時間です。
従来の刺青に使用するレーザーはQスイッチレーザーでしたが、これはレーザー照射時間がナノ秒(1ナノ秒:10億分の1秒)単位であり、ピコ秒レーザーはこれらより1000分の1の照射時間になります。照射時間が短くなると何が良いかと言いますと、レーザーの切れ味が鋭くなるためより多くの色素をより細かく破壊することができます。
また、レーザーの出力を上げなくてもQスイッチレーザーと同等あるいはそれ以上の効果を発揮できるため、熱の発生による周囲の副損傷も少なく済みます。また、この切れ味が鋭くなったことで従来のレーザーではなかなか効果が得られなかった色でも、効果が得られるようになりました。
ただ、だからと言って一つのレーザーですべてがうまくいくわけではありません。ウルトラパルス炭酸ガスレーザー(U-CO2)併用の必要性もまだあり、従来治療のほうがより早く結果を出す場合もあります。
実際の治療の回数は3回以上となります。背中など広範囲の場合は、さらに分割して治療を行います。一度に全てを治療してしまうと、背中をつけて寝られない等、患者さんにとって傷が癒えるまでの期間が大変です。痛みがあるのは最初の3-4日間ですが、それほど強いものではなく普通に仕事(デスクワークなら可)を行えます。傷が完全に上皮化するには、10日から2週間ほどかかります。その間は飲酒、運動、浴槽につかるような入浴は控えてもらいます(シャワー浴は可)。その後、次の治療までは外用薬を使用してもらいます。次の治療までは3ヵ月以上間隔を開けます(分割治療の場合は、ここまで待つ必要はありません)。
刺青除去のレーザー治療以外の各種治療法
形成外科手術
1. 単純切除、縫縮
小さなものであれば簡単に行えます。治療も1回の外来手術レベルで済むため、一つの選択肢としては良いと思います。しかし、体の部位や刺青の大きさに限りがあるため、治療可能なものは限定されてしまいます。傷跡は100%残るため、レーザー治療のように状況次第では治療の痕跡すら残らない可能性がある場合は、少々もったいないと感じます。また、刺青の一部を切除するという修正は絵柄の変形をおこすのでおすすめできません。
2. 切除+植皮
刺青の面積に拘らず治療可能です。全層植皮が行える大きさのものであれば、術後のアフターケア次第では目立たないようになりますが、それ以上の大きさだと分層植皮となるためやけどの治療後と同じになり、整容的には難在りです。治療後の引きつれ等が生じる可能性もあり、また当然刺青のある場所以外から皮膚をもらって植皮するわけですから、他部位の正常皮膚にも傷や治療痕が残ります。刺青を完全除去、それこそ過去を払拭、清算したいと望む方以外にはお勧めできません。
3. 削皮術(ダーマブレージョン: dermabrasion)
読んで字のごとく、皮膚の表面からグラインダーを使って刺青の色素を削り取っていく治療です。この治療が、レーザーを持たない大きな病院では最良の方法となります。しかし、レーザーと違ってどうしても摩擦熱による副損傷が問題になります。削皮術と保存的な上皮化を待つ治療は、ともすれば結果が分層植皮と比較してわずかに良い程度でしかないこともあります。どのような術式にしろ、入院治療が必要になることが多く、その場合は自費になるため思いのほか入院治療費が高騰するにも拘らず、結果が今一つとなる可 能性が高いようです。
アートメイク除去の場合
アートメイクに限って言えば、刺青と比較して、話を半分以下で捉えてもらえればいいと思います。先般のアートメイクは、時間の経過とともに黙っていても薄くなる傾向が強く(逆に言うとそれほど浅い層にしか刺青として入っておらず)、レーザー治療で比較的簡単に取れるものです。
他の治療ではどうしても手術痕が残るものであり、また目の周囲に施行されているケースが圧倒的に多いため、レーザー治療が唯一の選択と言ってもいいほどです。しかし、顔であることから逆に1週間ほど人前に出られない、サングラス着用を免れないなど日常生活に支障が出ますので、治療のスケジュールをしっかり立てる必要があります。
外傷性刺青除去の場合
外傷性刺青とは、事故や転倒などによって生じた深めの擦過傷に地面の炭粉(アスファルト、土、コンクリート等)が入り込み、取り除かれないまま傷が治ってしまったときに生じます。受傷初期には、粒子の細かい物の一部は自分の血流、リンパ流で自然に取り除かれますが、多くはそのまま残り、しかも時間の経過とともに炭粉のまわりがカプセル化することで皮膚の他の組織から隔離された状態になり、以後変化することなく経過します。
自分で病院に行かず、大したケガではないからと放置した結果、傷は普通に治ったけれど外傷性刺青が残ったという方もいます。通常、病院では、擦り傷の患者さんがご来院されると先ずよく傷を洗い、場合によっては、ブラッシングをすることで可能な限り、そのような異物を取り除こうとします。但し、その患者さんで他により優先すべき処置(救命等)等がある場合、後回しになり、結果として外傷性刺青になったりすることもあります。
外傷性刺青のレーザー治療
多くの場合、外傷性刺青の原因が自分で転んで擦ってできた傷など軽いケガの後なので、炭粉も比較的浅い層にとどまっているためピコレーザーもしくはQ-スイッチアレキサンドライトレーザー単独でもよく反応し、色を取り除くこともできます。ただ、傷跡が残ってなおかつ外傷性刺青もある場合は真皮層の深くまで及んでいる可能性があるため。Q-スイッチYAG(ヤグ)レーザーや場合によっては、U-CO2レーザーと組み合わせた複合レーザー治療が必要になります。
外傷性刺青でピコレーザーもしくはQ-スイッチアレキサンドライトレーザーを単独で用いた場合のみ、保険適応となります。
刺青治療の限界と合併症について
レーザーといえども治療には限界がありますし、合併症の危険もあります。刺青の深さが真皮最深部までのものであると、色が薄くはなってもなかなか取れない、色が取れても瘢痕治癒し傷跡になる等が起こりえます。
もちろんその前に、様々な治療の工夫などがあります。この場合、可能であればその部分だけを切除する方法もあります。その他にもレーザー、手術に拘らず生じる可能性のある合併症としては創感染、肥厚性瘢痕等があげられます。
治療回数 | 1回~ |
---|---|
治療期間 | 半年~ |
治療間隔 | 3ヶ月~ |
治療費 |
刺青 ¥13,200(税込) ~ ¥22,000(税込)/1㎠~
アートメイク ¥11,000/1cm~
※外傷性刺青 保険適応の場合
<3割負担の場合> ・4㎠未満 6000円 ・4~16㎠未満 7110円 ・16~64㎠未満 8700円 ・64㎠以上 11850円
|
使用レーザー | |
可能性のあるリスク・副作用 |
創感染、瘢痕化、色素沈着、発赤、脱色素など |
(再診料、写真代、薬剤費などが別途かかります。)
治療をされる方へ(治療前後にご準備いただくと便利なこと)
1.患部を出しやすい服装でお越しください。
2.治療後、部位や状況によっては
ガーゼが当たる場合と当たらない場合がございます。
お顔や首の治療の方は
マスク、サングラス、スカーフ、
つばの広い帽子などを
ご準備していただくとよいかもしれません。
3.赤ちゃんの治療後は、患部を触る可能性がありますので
ミトンなどのご準備があるとよろしいかもしれません。
4.治療の状況にもよりますが、
1週間ほど患部はお化粧等ができない場合がございます。
そのため治療を行う場合は、前後のご予定などもお考えの上
ご予約をいただければと思います。
※当サイトに掲載する写真は、患者様のプライバシーを保護する為にイメージ写真となっております。