アザ治療
アザのレーザー治療には、専門的な知識と豊富な経験が必要です。
アザは大きく黒・茶・青・赤アザとその他に分けられます。多くは生まれついてのものですが、一部は成長してから現れるものもあります。アザは、特に顔にある場合にはコンプレックスの原因となり、対人関係に影響を及ぼす可能性もあります。従来の治療には切除縫合または植皮術等がありましたが、レーザーの出現によって飛躍的に治療が進歩しました。
レーザー治療は約40年前からありますが、実際に安定した結果が得られるようになったのは最近15年くらいです。一般的なイメージとして、レーザー治療はただ光を当てるだけの単純な治療と思われがちですが、実際には外科手術と同じように専門知識と豊富な経験が必要です。ご両親と相談しながら、お子さんにも安全な治療が行えます。
黒アザ
黒アザ(母斑細胞母斑:nevo-cellular nevus)について
黒アザは字のごとく濃い茶から黒いアザで、表面は正常皮膚様からざらついて軽度隆起したものまで様々です。イメージとしては、ほくろの大きいものになります。大きさも直径1cmのものから、最重症例ではほぼ全身にわたるものまであります。黒アザは正式には母斑細胞母斑と言います。これは母斑細胞という、メラノサイト(紫外線の刺激で日焼けしたときの色素メラニンを作る細胞)の異常細胞が集まってできた母斑と理解していただけるとよいでしょう。
黒アザ治療の目的は、この母斑細胞を根絶やしにしつつ、できるだけ周囲の正常皮膚で治すようにすることです。効率よく母斑細胞を壊すためには、複数のレーザーが必要となります。黒アザは明らかに色・質感が周囲と異なるため、積極的な治療を行います。
まず治療の際、最初に使用するのはウルトラパルス炭酸ガス(U-CO2)レーザーです。このレーザーは水分を含むものを蒸散するのでレーザーメスとしての使い方が中心になるのですが、黒アザの治療の際は Computed Pattern Generator(CPG)という特殊な装置を付けます。このCPGを設定することでレーザーが当たる形(三角形、四角形など)とその大きさ、レーザー密度をコンピューター制御でレーザー照射することが可能になります。この装置を使うことで通常なら点ないし線で行う治療を面で行うことができます。黒アザの治療の場合均一の深さまでアザを削る必要があるので安全にかつ、緻密な治療を行うのにこの装置は重宝されます。
傷跡にならない深さまで黒アザを削った後はQ-スイッチ アレキサンドライトレーザーを当てます。このレーザーからは40~50ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)でレーザー光が照射され、茶や黒などの色がついたものをそれこそ瞬間的に燃やしなおかつ周囲への伝導熱の影響(熱損傷)がないようにしています。つまり黒アザの削った表面からさらに深部に残っている黒アザの成分をできるだけ壊すようにしているのです。この組み合わせ治療は複数のレーザーを持つクリニックでしか行えません。どれか一つしかレーザーを持たずに治療を行った場合、治療の効果が全く無いかあるいはいきなり傷跡になってしまう可能性が高いです。ただし、この組み合わせ治療を行った場合でも傷跡が残らないとも言えません。
場合によっては多少の傷跡が残りますが、それでも治療前のアザの状態よりは整容的に優れています。しかし、いきなり傷跡になる前提で治療を行うことはありません。治療回数、治療期間は個々の黒アザによって異なるため、診察時に具体的な治療プランをご提案させていただきます。
治療の概要
治療回数 | 3回~ |
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治療期間 | 6ヵ月~ |
治療間隔 | 1~3ヵ月毎 |
治療費 | ¥13,200(税込)/1c㎡~ |
使用レーザー | アレキサンドライト(Qスイッチ)レーザー、ウルトラパルス炭酸ガスレーザー、色素レーザー、その他 |
可能性のあるリスク・副作用 | 創感染、瘢痕化、再発、悪化、色素沈着、発赤、脱色素など |
茶アザ
茶アザ(扁平母斑:Nevus spilus)について
茶アザは日焼けした肌のような色をしたアザで、黒アザと異なり肌の質感は正常肌とほぼ同じです。紫外線の当たり方によって色の濃淡も変わり、大きさも直径1cmに満たないものから肩・胸全体に拡がるものまであります。大半のケースは生まれついてのものですが、一部では思春期の日焼け・けがなどがきっかけで生じる遅発性のものがあります。小さい遅発性のものは、老人斑と見分けが付きにくい場合があります。一部では、アザに周囲と比べ太く長い毛が生えてくることもあります。
茶アザの原因は、皮膚メラノサイトの機能異常とされています。周囲の正常肌と比べ、同じ紫外線刺激に対して過剰にメラニンを作ってしまうため、アザの部分が周囲から茶色く浮かび上がってしまうのです。茶アザは紫外線の量によって若干色の濃淡の変化をするため、夏場に少し濃くなり逆に冬場には少し薄くなります。しかし身体に対する相対的な形や大きさは、未治療では生涯変化することはありません。もちろんお子さんの成長に伴って実面積は大きくなりますので、赤ちゃんの時に小さいから気にならないとしていても、成長すると実はかなり大きなものだったりします。
茶アザ治療の目的は、アザの色を取り除きその状態を維持することです。もちろん一度色が取れてそのままのこともありますが、しばらくすると薄く色が戻ることがあります。これを放置するとまたもとの色になってしまうので、維持の治療が必要になってきます。
維持治療はガーゼを当てたり消毒したりする必要がないので、比較的楽に治療を受けることができます。茶アザの治療では、黒アザの治療ほど侵襲の高い治療は原則的に行いません。これは茶アザの肌の質感は正常なので、いくら色が取れても傷跡にしてしまうと、治療前と比較して整容的に悪くなってしまう可能性があるからです。
治療回数・治療期間は個々の茶アザによって異なるため、診察時に具体的な治療プランをご提案させていただきます。
治療の概要
治療回数 | 1回~ |
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治療期間 | 6ヵ月~ |
治療間隔 | 1~3ヵ月毎(色をとる治療:約3か月毎、維持治療:1ヵ月~) |
治療費 | ¥13,200(税込)/1c㎡~ |
使用レーザー | アレキサンドライト(Qスイッチ)レーザー ウルトラパルス炭酸ガスレーザー、その他 |
可能性のあるリスク・副作用 | 再発、色素沈着、発赤、脱色素など |
青アザ
青アザ(真皮メラノサイトーシス:Dermal melanocytosis)について
青アザは蒙古班、太田母斑に代表されるアザで発生部位、色味で個々に名前がついています。肌の質感はどれも正常です。このアザの原因としては、本来表皮と真皮の境界上にあるべきメラノサイトが真皮内に存在するためです。
青アザ治療の目的は、この真皮内のメラノサイトを壊すことです。治療は確実に複数回必要ですが、効果は治療の回数が増えるごとに色が薄く、大きさも小さくなっていきます。
太田母斑(Ohta′s nevus)
顔の額、目の周囲に現れます。通常片側だけですが、まれに両側にあることもあります。眼球結膜、口腔粘膜にも現れますが、この2部位はレーザー治療の対象となりません。幼少時は色が鮮やかな明るい青色をしていますが、紫外線暴露及び加齢とともに色が少し黒ずんできます。まれに思春期に発生することがありますが、治療の経過、結果は異なりません。
蒙古斑、異所性蒙古斑(Mongoloid spot)
日本人の95%に出現するアザで、通常では5歳前後までに薄くなるため、治療の対象となるのは限られた場合です。色が特に濃いもの、背中から肩にかけ広範囲なものは自然消退しにくいとされています。また7歳までに消退しない場合は、その後の自然消退は30%程度の人にしか期待できず、13歳まで残っているアザは、その後生涯不変とされています。蒙古斑は身体のどこにでもできますが、臀部・腰以外に生じたものを異所性蒙古斑といいます。身体の前面に生じた異所性蒙古斑は、自然消退しにくいとされています。
後天性真皮メラノサイトーシス(Acquired Dermal Melanocytosis)
思春期以降に、多くは女性に発生します。当初は暗褐色の細かい、筆ではねたような形をとることが多いため、ソバカスのように見えます。加齢とともに次第に融合し合い、大きくなっていきます。妊娠、出産を契機に発生することもあり、また女性の生理周期で色が濃くなったり、薄くなったりするため、ホルモンの関与が指摘されています。厳密にはアザに分類されるべきものではないかもしれませんが、治療の経過が非常に似ている、また原因が同じであるためにここに分類しました。
治療の概要
治療回数 | 5~10回 |
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治療期間 | 1~2年 |
治療間隔 | 2~3ヵ月毎 |
治療費 |
¥13,200(税込)/1c㎡~ 異所性蒙古斑、太田母斑は保険適応可能な場合あり |
使用レーザー | アレキサンドライト(Qスイッチ)レーザー |
可能性のあるリスク・副作用 | 色素沈着、発赤、脱色素など |
赤アザ
赤アザ(血管腫:Hemangioma)について
赤アザは血管腫とも呼ばれますが、様々な形態・種類が含まれます。また赤アザの種類・発生部位によっては、皮膚以外の病変や合併症も考慮しなくてはなりません。ここでは、体表の治療対象になりうる血管腫を取り上げます。
赤アザ治療の目的は、異常血管を壊し周囲の正常皮膚で治すようにすることです。治療に対する反応は様々で、それこそ、1回の治療で消失することもあれば、あらゆる治療に抵抗するものもあります。
ただ、最終的に完全に取り除くことができなくても範囲が小さくなる、色が薄くなり普通の化粧でもカバーできるなど効果を上げることはできます。効率よく血管を壊すためには複数のレーザーが必要となります。また効率よくレーザー光をアザの深部まで届かせる、またはレーザー光に対する反応を上げるために種々の工夫が必要になります。
治療回数、治療期間は個々の赤アザによって異なるため、診察時に具体的な治療プランをご提案させていただきます。
単純性血管腫(hemangioma simplex)
最も多くみられる血管腫です。腫瘍ではありません。顔・首に多くみられますが、体表のどこにでも発生します。色も明るいピンクから暗紫色まで様々です。未治療であれば生涯を通してアザの範囲に変化はありませんが、加齢に伴い皮膚やアザの厚みが増したり、四肢の場合は骨や組織が肥大したりして、左右非対称になることもあります。
苺状血管腫(Strawberry mark)
出生直後から数週間以内に数ヵ月かけて急速に増大し、その後数年間かけて自然退縮します。原因は、未熟な毛細血管の増殖によるものとされています。自然退縮するので経過観察のみ(wait and see)でよいとされていますが、急速な膨張によって伸展された皮膚が、退縮後に伸びきった風船のゴムのような状態になることを考えると、早期のレーザー治療がよいでしょう。
治療の概要
治療回数 | 3回~ |
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治療期間 | 6ヵ月~ |
治療間隔 | 1~3ヵ月毎 |
治療費 |
¥13,200(税込)/1c㎡~ 単純性血管腫、苺状血管腫は保険適応可能な場合あり。 |
使用レーザー | 色素レーザー、Nd:ヤグレーザー、ウルトラパルス炭酸ガスレーザー、その他 |
可能性のあるリスク・副作用 | 色素沈着、発赤、脱色素、瘢痕化など |
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